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◆ 予算2000円のひそかな楽しみ

これまで絶望的に食品事情が悪かった私の住む町に、先日大きなスーパーができました。この中に、三浦屋、THE GARDEN、そしてKALDIのような欧州系の輸入食品屋さんが一気にできました。

ああ、これはもう感涙物のうれしさ。

そろそろ夕食の支度の頃かなと考えて、冷蔵庫を開けて献立を考える。何か作れるなと思うけど、なんだかあと一つ物足りない、なんて考える。
そんな時に、夕暮れの風が吹き始めた住宅街を、ぷらりぷらりと歩いて上記のようなお店に立ち寄り、晩酌のアテを探して戻る。

ああ、今日はこれを肴にこのお酒を飲もう。
生きてることの多くは、こんな日々の小さな楽しみで報われる。そんな気がします。

さて、そんな夕食時のひそかな楽しみ。
上記の3つのお店ができてから、だいたい2000円あれば極上の体験ができるということがわかってきました。いえ、毎日じゃありません。一回2000円投資すると、3日ほど楽しめる。とはいっても、毎日楽しみたいわけでもないので、「今日は我慢」とか「また来週」なんていう先送りをしながら、ひそかな庶民のぜいたくを楽しんでいるわけです。

このところは、このうちの1軒でトカイワインを発見して、小躍りしていたのです。

トカイワイン。そう、ハンガリーのお酒です。

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トカイがあるなんて珍しい。そうだ、今日は冷蔵庫に胸肉があった。あれでコルドン・ブルーでも作って、オーブンにある間にトカイワインをちびちびやりながら、フルーツ系のチーズでもつまみたい。ナッツでもいいな。トカイは濃厚だから、なるべく簡単なアテがいい。

それとも食後にちびちびもいいな。グラスはそうだな、モロッコで買ったミントティーのグラスがちょうどいいかも。トカイが1400円、チーズが600円。そんな予算でどうかな。

…そんなことを妄想しながら、お店をぐるぐる徘徊して回るわけです。で、「ああ、でも今日は締め切りの仕事があった。飲んじゃうと書けないから明日の楽しみにしよう」なんて思いながら帰る。トカイワイン1本で、こんなに幸せになれるってすばらしい。

私のように、息子と二人暮らしだと、酒の肴というのはほんのちょっとでよいのです。
夫が喜ぶ居酒屋おつまみを作って……なんていうのとはちょっと違う>笑 私が納得できるものがほんの一口あればよい。そんな「一口」のありかは、その日によって違うけれど、その「一口」の楽しみが旅によって大きく増幅しているのは確かだなあと思う。

旅って、こんなときに本当にいいものだなあ、なんて思います。

トカイワインには、こんなちょっとした思い出があるのです。

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ハンガリーのブダペストは、ドナウ川をはさんでブダ地区とペスト地区に分かれています。その二つを結んでいるのが「くさり橋」。その橋をわかって小高い丘を登ると、いかついブダ城の城門があります。路地に迷い込んでいたら、こんな風にスコンと抜けた中庭に行き当たりました。小さな小さなお店が3軒並んでいます。
ぼんやり眺めていたら、写真のベンチに座っている魔女のぬいぐるみのような風情の小さなおばあさんが出てきて、「これを飲んでけ、ほらおいでおいで」と、なにやら手招きしている。小さくてとてもかわいい。そして笑顔がとびきりチャーミングなのです。ついふらふら店の中に迷い込む。

ハンガリー語だから何を言ってるのかはよくわかりません。手にはトカイワインの小さな銀盆がある。

「マダム、これはトカイワイン。飲んで飲んで」
「じゃあ、次はこっちを飲んでみて。さっきのは2ブット。こっちは4ブット」

不思議です。言葉はわからないのに、私たち、ちゃんと会話しているわけです。おばあちゃんはトカイのグラスを掲げながら

「これはダーリンに飲ませるといいのよ。今夜ダーリンがこれを飲んだらね。もうあとはラブラブ! それはもう素敵」
そして、かわいらしい口を尖らせて、しきりに「チュッチュッ」とキスの真似を続けている。

ノックアウトです。
その場で買いました。本場、ハンガリーのブダペストで買った2ブットのトカイワイン。(帰国後知りましたが、ブットとはトカイのグレードをあらわすものです。ブットが上がると質も値段もどんどん上がっていきます)

このトカイワインは、私のスーツケースの底に収められ、そのあと立ち寄ったベネチアの運河沿いのホテルで、夜にゴンドラ曳きが歌うカンツォーネを遠くに聞きながら、ボトルの蓋を開けることになりました。

トカイを飲む。
たったそれだけのことだけれど、その蓋を開けるとき、私にはブダ城のおばあちゃんのかわいらしいキスの音と、ベネチアの運河の音が聞こえてくる。
旅の思い出はそんな風に、残りの人生の大きな宝物になることがあるのだと思います。それは年齢を重ねて薄れていくものではなく、きっと10年後にはさらに鮮烈な宝物となるような気も、またするのです。

だから、旅に出たらたくさんその土地のものを食べる。レストランのおいしい食事は再現することが難しいけれど、買うだけで楽しめるちょっとした食材は、帰国後の大きな楽しみになります。だから、いっぱい現地で体験したいなあと思うのです。

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これはポルトガルのポルトワイン。ポルトを飲むと、リスボンの港に漂っていた、炭焼きのタラが焼けるにおいを思い出します。ポルトガルで買ったグラスでいただきます。遠くにファドの歌声が聞こえてくるような気になります。トカイもポルトも、日本で2000円だせばちょっとしたものは手に入ります。よい時代になったもんです。

さて。そんな旅のあれこれでお酒と肴を決める楽しみに、昨日の私も浸っていました。てっきりトカイを買おうと出かけていった先で、スペインのワインをみつけてしまったのです。しかも1400円と安い。

ああ、きりりと冷やしてこれもいい。
つまみはオリーブが欲しいな。バルセロナのバールみたいに、種なしのオリーブをアンチョビと小さなヨウジに刺して、ピンチョスにして食べようか。ちょうど2000円予算だよ。そうだ、ヨウジはスペインのバール用の両端がとがったものは手もとにないけれど、台北で買ったお茶請け用のヨウジが使えるかもしれない。そうだ、あれも両端がとがっていたのだった。

はて。

でも口の中はどうやってもしょっぱいものを欲しがっている。それもしょうゆのしょっぱさが無償に欲しい。うーん、トカイにもスペインの白にもしょうゆはいまひとつだなあ。しょうゆしょうゆ、そうだよ今日の私はしょうゆ味が欲しい!

ということで、1時間ほどお店をあちこち楽しくうろうろしているうちに、山口県のかまぼこをみつけてしまいました。一度かまぼこが食べたいと思ったら、もうかまぼこが頭から離れません>笑

結局、今日の酒はビールということになりました。
ベルギーやドイツのビールも駅前のお店でたくさん手に入るのですが、やっぱりかまぼこには日本のビールです。ってか、私の日常としてはグリーンラベルです>笑

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左から前の日に特売で買ってあったそらまめ(沖縄の塩を添えて)。
待望のかまぼこにたらこをサンドしてわさびで。
かまぼこと一緒に買ったパンチェッタ。これは週末の昼にカルボナーラになる予定のものをちょっとだけ。

のりと、しょうゆの二度焼きせんべいも添えて。お皿は300円ショップでみつけたものです。えらいもんです、300円ショップ。
総額で1500円ほど。家庭の主婦が一人で楽しむには贅沢な値段ということになってしまうのでしょうか。でも、残りは全部明日からの献立になるわけで。ほんとにかわいらしい楽しみだと思うのですわ。

今日は旅の思い出はないけれど、のんべえの煩悩が詰まった晩酌となりました>笑
ビバ、のんべえ!

さあ、週末はトカイを買いに行こうかな。

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コメント

んーー、素敵!
旅の思い出と共に飲むお酒というのが
あちこちを旅してきた武蔵野夫人ならでは・・・ですね。
そしてそういう素敵な旅をしてきたからこそ。

ちょこちょこと食べたいものを作って、
お酒を楽しむ・・・最高の贅沢ですね。
ああ、お酒が飲めてよかったー!!

>kotoさん

わー、コメントありがとうございます!

そうそう、お酒が飲めてよかったねー!!!!
人生の大きな喜びだよねー! 

あとはさ、やっぱり初対面の人と「お酒好きですか?」「はい、好きですねえ」「うまいものつまみながら、今日は何のお酒にしようって考えるのは何より楽しいですねえ」
なんて話ができると、ほんとにしあわせな気持ちになりますー(えへへ、上記は今日のマンションの理事会の帰りに理事さんたちとおしゃべりしながら帰ってきたときの会話です)。

旅の思いでも、とってもいい肴です。
また一緒に旅に行こうねー!!!

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